短歌で随筆

一日一首、紹介&雑感。『フリックでコラム』の副ブログです。

カテゴリ: オリジナル

人生に意味などないさ彼岸花燃える畦道泥む夕暮/しゅろ

日本のヒガンバナは、クローンのようにして殖えるという。種子をつくることができないため、理屈からすれば受粉も意味がなく、花を咲かせる必要もない。それなのに、わざわざ多大なエネルギーを使って、あの風変わりな形の花を咲かせる。

ヒガンバナは見た目から生態まで何から何まで変わっているために、古くから不吉だとも特別だとも言われてきた。そうやって勝手に意味付けているのは人だけで、ヒガンバナはそんなこともお構い無しに今年も咲くのだろう。

過ちを認めたくなくて誰よりも美しい平行線を引く/しゅろ

業種柄、訂正をよくする。

二重線を引いて印鑑を押す、あれだ。

今でこそさらさらと書類を作ることができるが、昔はどう慎重にやっても、どれほど再確認しても、なぜか間違えた。
 
頭を使うような難しいことならまだしも、簡単なことなのに間違えることが自分でも理解できず、悔しくて仕方がなかったあの頃を今でも忘れることはない。

せめて訂正の二重線だけは美しく。そんな気持ちを歌ったものだ。

街頭のつつじ数十眺むればつばきのごとく捨てし日を恥づ/しゅろ
つつじがきれいな季節なので作った。

毎年、街でつつじを見るごとに、花の蜜を吸っていた子供の記憶がよみがえる。

むしった花はひとつやふたつではなかったはず。なんということを。

教えてよそろそろ私が何界の運慶なのかモーツァルトかを/しゅろ
夏目漱石『夢十夜』第六夜からのインスピレーション。

モーツァルトには『アマデウス』のイメージが多分に入っている。

すべての普通の人の思いをのせて。

音楽のようだねきみは笑ったり泣いたりぼくをオルガンにして/しゅろ
オルガンは西洋の楽器の中で少し特異なポジションにある。教会音楽と結び付きが強く、その音色は神の声そのものでもあった。

いくつもの音色を出すことができ、その複雑な構造はまるで生体器官のよう。それもそのはず、organの語源は器官であり、そのまま英語の単語でもある。

そんな特別な楽器だということを踏まえての一首。

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