永らへばまたこの頃やしのばれむ憂しと見し世ぞ今は恋しき/藤原清輔

生きながらえたならば、また今のことが偲ばれるのだろうか。昔辛かった頃のことが、今となっては懐かしく思われるように。

不幸のどん底にいると、この世の終わりのような気持ちになるし、昔はどうだっただの、いつかどうなるだの、大局的に物事が考えられなくなるものだ。

それでも不思議なもので、何年か経った後に振り返ってみると、どうしてあの時はあそこまで思い詰めていたのか、もっと良い抜け道があったのにどうして思いつかなかったのか、たくさんのルートが見える。もちろん、すべてがそうではないが、ほとんどそう。

おそらくは、「今」辛い渦中にいる時に作られた歌なのだろうが、悲壮感はない。今の苦しさもあえて客観視してやろうとする、達観ぶりを感じとることができる。

あらゆる人の共感を呼びそうな一首。百人一首のひとつでもある。