茶の粉の青微かにて不可思議の耀ひに充つ茶筒のうちは/田谷鋭

2011年にNHKにて放送された『へうげもの』というアニメがある。全部で39話あるのだが、ようやっと見通した。見るのが苦痛だったから時間がかかったのではない。一話一話がおもしろすぎて、見るのがもったいないくらいだったのだ。

武人でありながら数寄(茶の湯をはじめとして、広く文化芸術のこと)にも通じていた実在の人物、古田織部を主人公に、数寄を愛し、極めし者たちの人間ドラマを生き生きと描く。古田織部を主人公としているものの、作中でもっともインパクトのある人物は千利休である。古田織部も大概の数寄者であったが、千利休は誰彼をも凌ぐ日本一の数寄者として、随所で圧倒的な格を見せつける。

作品を通じ、茶の湯という芸術分野がもたらした文化的価値の数々を知ることができる。いつぞや話題になった「おもてなし」も、客人を迎え入れる作法として、茶道が育んできた概念だったのだと感じるようになったし、思えば、書だって茶室に飾ってあれば、生け花だってある。朝ドラ『スカーレット』のテーマである陶器だって茶の湯の道具だ。

『へうげもの』を見たことで、これまでと見える景色が変わった気がする。茶道はなにも、お茶を飲んでお菓子を食べるだけの儀式ではない。現代を生きる私たちが、時にライブに行き、映画館に足を運び、美味しいものを食べることと地続きの非日常体験なのだ。

と、『へうげもの』の話ばかりしているが、この作品にであう以前から抹茶の緑が好きであった。自然の森を思わせる鮮やかな緑と、ふつふつと浮かぶ泡のコントラストは、見つめているだけで心穏やかにさせるものがある。ただ飲むだけのものでないなにかは、既に感じていたのやもしれない。

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これだけ茶の湯が身近になったというタイミングで、この本を古本屋で見かけたので衝動買いした。

映画化もされている本。ひとつのことがきっかけで、こうして自分の世界が広がっていくことはとても楽しい。

日日是好日
黒木華
2019-04-24


話ついでにもうひとつ。『茶の湯』という古典落語があって、これは以前から知っていたのだが、これがおもしろくて仕方がない。本物の茶の湯の世界とは程遠い(むしろことごとくずれている)が、これはこれで一級の芸。


茶の放つ「不可思議の耀ひ」は果てるところを知らない。