海を知らぬ少女の前に麦藁帽のわれは両手をひろげていたり/寺山修司

ふたつの解釈があるそうだ。

海を見てみたいなどと呟いた少女に、海はこんなもんだぞと必死になって説明している少年。青春映画のワンシーンのような光景が浮かぶ。

もうひとつ。

海すらも知らない片田舎の小さな町で育った少女が、外の世界に飛び出したい年頃に差し掛かる。常に側にいて共に成長してきた少年は、遠くにいってしまいそうになる少女を必死に止めようと精一杯とおせんぼをしている…。こちらは、青春マンガの一ページのようだ。

演劇の人、『書を捨てよ、町に出よう』の人で知られる寺山修司は、最初は歌人として知られた。短歌の世界も、寺山修司本人の内情、心境というよりは、映像的、舞台的な気がする。

多様な読みを認めるフィクションとしての短歌。とても興味深い一首である。