短歌で随筆

一日一首、紹介&雑感。『フリックでコラム』の副ブログです。

2021年03月

まだ春が届いていません大至急宅配便で送って下さい

以下の本より引用。


ちょっとしたユーモアがあっておもしろい。春が届くという既存の表現を使って、うまく言葉遊びをしている。

暖かい日も増え、桜は満開。今日は3月31日、思いっきり春である。

はつなつのゆふべひたひを光らせて保険屋が遠き死を売りにくる/塚本邦雄

前衛短歌で有名な作者だが、これは比較的わかりやすいほうではないか。

金融マンの表面の良さと、金融商品の得体の知れなさが絶妙な怪しさをもって迫ってくる。

なんとかっこいい歌であることか。保険屋さんには申し訳ないけれども。

「仕事だろ」 一言で済む言葉には何のへうげも入っちゃいない/しゅろ


精神論は論外だが、当たり前のことをさも特別なことのように言うのも好きではない。限られた時間の中で何ができるか頭を使って行動しようとか、お客様目線にたって何が喜ばれるか考えることとか、それはそうだろうと。

人の心を動かすには、ちょっとしたズラシが必要だと思っている。それはユーモアだったり、おどけだったり、本当に伝えたいことをちょっとだけ隠すか逸らすかして、相手に気づいてもらうこと。そこに期待をかけることこそ、真に相手を思っての表現だと思うのだ。

現在私は『へうげもの』全巻取組中。アニメは見たのでどんなものかはだいたい知っているのだが、世界観の濃さに圧倒的されてついにマンガを購入した。

日頃から思っていることと融合させて一首。いかがだろうか。

何事も思ふことなく
いそがしく
暮らせし一日ひとひを忘れじと思ふ/石川啄木


啄木はメジャーな歌人だが、いろんな短歌を見てくると、一周回って啄木の歌が響く。このブログでもよく取り上げている気がする。

あまりにわかりやすいので、「詩」としてどうなのかと思うこともあるが、やはり良いものは良いのではないだろうか。

社会人として日々を過ごしている者として、共感せずにはいられない一首。いそがしいのは仕方がないが、覚えておこうとするのは自分の意志である。そうやって生きていきたい。

春風の花を散らすと見る夢はさめても胸のさわぐなりけり/西行法師

桜の散る様を胸騒ぎとセットで歌うものはしばしば見られる。

人は、あまりに素晴らしいものを見たり感じたりすると、逆に怖くなったり、悪寒がしたりするものらしい。

人智を超えたものは「畏れ」から崇拝の対象になるように、怖さと敬いは表裏一体だ。

このあたりはジブリ作品の描くところであるので、この機会に是非。

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