短歌で随筆

一日一首、紹介&雑感。『フリックでコラム』の副ブログです。

2021年02月

科学者も科学も人をほろぼさぬ十九世紀をわが嘲笑す/坂井修一

科学礼賛の世に生まれ、その恩恵に浴する私たちではあるが、20世紀に何をもたらしたのか暗に仄めかしているところにうまさがある。

今、Dr.ストーンというアニメを見ている。科学の力をこれでもかと持ち上げ、そのたびにわくわくが止まらない良作ではあるが、作中の(アンチ科学な)敵方にも少しばかり共感する。

科学のもたらす光と影。嘲笑すべきなのは過去の人々でなく、誤った利用をする者たちなのだ。

かたむきて地下に入りゆく車中には眠れる男がずらりとならぶ/大島史洋

傾いているのは、電車だけではない。THEサラリーマン哀歌である。

余談だが、私も電車では寝る派。普段昼寝などしないのに、どうして電車では眠たくなるのだろう。

あれだけの人目があるのに、多くの人が気を許す不思議な空間。単に疲れている男達を描いているというより、男達がずらっと眠る神秘的な空間を描いていると解釈するほうがおもしろいのではないか。

ねんごろに醸しなりたる酒ゆゑに神の心となりてわが飲む/秋葉四郎

日本酒を飲むときは、不思議と神聖な気持ちになる。

ビールだとこうはいかない。冷蔵庫から出して缶を開けて飲むまでのスピード感。実に世俗的な酒だ。

これが日本酒だと、飲むと決めたら心してかかる。ごくごく飲めるものでもないし、一度に含んでもそれほど美味しくないもの。ゆっくりなめるように飲むから、美味しい。

酒好きによる良い酒の飲み方が詰まった一首。同じ酒好きなら共感できる歌ではないか。

サラリーの語源を塩と知りしより幾程かすがしく過ぎし日日はや/島田修二

働くとは生きるために欠くことのできない塩を得ること。

サラリーの語源を知ることで、いくらか救われた気持ちになったと歌う。

今日は25日、給料日のところも多いだろう。そのサラリーはまさしく、流した汗から生まれた塩なのである。

電線のなかりしころは鳥たちはあんなに並んで止まることなかりけむ/花山多佳子

この歌で言っていること、実際に考えたことある人はけっこういるのではないか。

電線に止まる鳥は今でこそありふれた風景だが、電線が世の中に現れたのはつい最近のことだ。

自然の風景なのに、実は人間が介入していることへの気付き。自然と人間の融和を図ってきた日本人らしい感性なのではないだろうか。

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