短歌で随筆

一日一首、紹介&雑感。『フリックでコラム』の副ブログです。

2020年09月

白露に風の吹きしく秋の野はつらぬき留めぬ玉ぞ散りける/文屋朝康

白露に風がしきりに吹く秋の野は、糸で貫いていない白玉が散っているようだ。

秋の激しい風に吹き飛ぶ白露を、真珠の散る様に見立てたという。ちなみに、歌人にとって秋と言えば風だったようで、秋風を歌ったものの代表歌にこんなものがある。

秋きぬと目にはさやかに見えねども風のおとにぞおどろかれぬる/藤原敏行

秋は気温より先に風から感じるもの。昔の人は文字通り風流である。

小倉山峰のもみぢ葉心あらば今ひとたびのみゆき待たなむ/藤原忠平
小倉山の紅葉よ、人の心があるならば今一度天皇の行幸があるまで散らずに待っていてほしい。

京都の小倉山荘には、夏に訪れたことがある。今でも紅葉の名所として知られる場所。今年は事情が事情なだけに行かれないと思うが、いつか紅葉狩りに行ってみたいところのひとつだ。

ちなみに、百人一首で検索すると間違いなく一番上に出る『小倉山荘』、本店で食事したことがある。

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百人一首の解説も素晴らしいし、料理も良かった。是非また行きたい。

君に逢ひて今帰りつつ行方なくしかも惑へるこの愁ひはも/新井洸
恋人に逢った帰りの行方のなさ。困惑で自分を失う様が歌われる。

恋人に逢ったあとなのだから、楽しかったでも、寂しいでも良いはずなのに、惑い、愁えているところが、複雑な心境をよく表している。

あのときの自分の気持ちはこんな風だったのかもと、言葉を当ててくれるような一首である。

組織さへ持たず貧しく沈黙のうちに守れる正しきも見よ/鈴木幸輔

黙っていることが静かな抵抗になるような場面もある。

昔から沈黙は金などと言うが、どちらかというと今はマイナスなイメージが強いのではないか。

言うときには言い、口をつぐむべきときには黙る。かっこいい一首である。

いさぎよき空の気色をたのむかな我まどはすな秋の夜の月/行尊
秋の夜の月が誰か導く者を象徴する。

この混沌の世界を変わらずに照らし続ける月。千年たっても日本人の感性は同じようだ。

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