短歌で随筆

一日一首、紹介&雑感。『フリックでコラム』の副ブログです。

2020年02月

閏ひをもちて今夜こよいのひろき空星ことごとく孤独にあらず/佐藤佐太郎

今日は閏日ということで閏を使った一首。

個人的にこの歌人はお気に入り。文語なのに堅すぎず、かっちりしているのに意味が取りやすい。ぴしっときまったスーツを着ているよう。

季節感はわからないが、前向きなエネルギーを感じる歌。今夜をこよいと読ませるかっこよさ。まさにセンスである。

僕たちが好きな季節に死ねるよう地球の花はばらばらに咲く/塔野陽太
誕生月こそ石や星座に結びつける風習はあるが、死ぬ時期を花に結びつける発想はなかった。

でも考えてみれば、どんな季節にも見頃の花はあるもので、いつ死のうがその花で飾ってもらえると思えば、とても前向きな気持ちになれる。

カジュアルに組み込まれた「死」。決して暗さや深刻さを伴わないのがこの歌のおもしろいところだろう。

以下より引用しました。

二次会のカラオケ店のモニターに故郷が映る東京も雪/織部壮

なるべく時代を感じさせないように工夫されているというカラオケの映像。当たり障りのないシーンが多いが、時々具体的な場所が映りこむこともある。

二次会のカラオケということもあって、テンションも上がっている中、ふっと懐かしい場所が画面に現れたら、一気に懐かしい気持ちになりそうだ。

この歌で連想したのは『なごり雪』。「東京で見る雪はこれが最後ねとさみしそうに君がつぶやく」あたりのしんみり感が似ている。

小さな部屋からバーチャルへ、そして外の世界に目を移す流れが綺麗な作品。二次会という設定も見事だ。

にぎやかで泣けてきちゃうよ四面楚歌も誰かいるだけ寂しくはない/ともえ夕夏

短歌投稿サイト『うたらば』より引用。お題は「歌」。

周囲を敵に囲まれている状態であっても、たくさんの人にかまってもらえているだけましという、非常にポジティブな捉え方をした一首。

人が人と接する上で一番きついのは、無視をされることだろう。興味を持たれない、相手にされないというのは、自分の存在を否定されるかのよう。はっきりと敵意をむき出しにされるというのは、自分の存在が認めてられていることの裏返しでもある。

もし今周りが敵だらけという状況であれば、ひとまずはこの歌を思い出して、寂しくなくていい、くらいに捉えるといい。ただし、ひとしきり耐えてみて、やっぱり四面楚歌だったら、ちゃんと逃げてください。

地球には関わりもなくながれをり戸棚のうへの猫の時間は/西田政史

先日とある古本市に出掛けた。せっかく来たのだからと血眼になって探していたら、岩波の現代短歌辞典を見つけるという幸運に恵まれた。

非常に状態が良く、嬉しくて仕方がない。毎日『短歌で随筆』を書き始めてからようやく半年が経ったところ。そろそろ新しい参考文献を揃えようと思っていた矢先だった。

さて2/22が猫の日だと知ってからずいぶんと経ってしまったが、早速前掲の辞典の「猫」の項目から一首。

猫はどうしてかくも人気があるものか。媚びないくせにちゃっかり人に世話をさせ、なついているかと思えばどこかへいなくなる。まるで理解できない生き物である。

その存在はもはやSFをも想起させる。理解できないけど、気にかけずにはいられない。違う次元、別の世界の生き物のようだ。

ツイッターで何万いいねが付いた猫の画像が流れてくるたびに、ほんのりとこの侵略者の脅威を感じる。人間ちょろい、と思われているに違いない。

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